355. 鳥人

今年(2024年)、大阪で開催された『古代メキシコ展』に〈アステカ文明〉のクァクァウチィン=鷲の戦士が展示された。鷲の被り物をした太陽神ウィツィロポチトリの戦士で、死後、鳥に変身したという。

人型の鳥は世界各地に存在する。有名なのは、絵にも描いた『ギリシャ神話』のハルピュイア=ハーピー。意味は「掠める女」。いじきたなく貪り食い、汚物をまき散らすというが、元は、風の神。すっかり半人半魚の姿が定着したセイレーンも、かつては半人半鳥だった。

『インド神話』のガルーダヴィシュヌ神の乗り物。人の身体に、大鷲の翼と頭。羽毛1枚で世界を支えられる程、巨大! であるナーガ族の天敵。〈仏教〉では、迦楼羅となった。これもを背負い、三世・世界・宇宙を飛ぶ。音楽の女神キンナリーも半人半鳥。

イースター島には、モアイ崇拝の時代の後、タンガタ・マヌ=鳥人の祭事が行われた。人間の祖マケマケが、マヌ・タラ(グンカンドリ)に与えたという島で開催される、卵取り競争だ。これに勝った部族の族長がその1年の王となり、マナ=霊力を持つ鳥人となる。逆に負けた者は、勝った族長に食べられてしまう!

中国の越山の深くに棲む治鳥は、鳩くらいの大きさの黒い鳥。夜になると人の姿となって谷川に下り、人の起こした焚火で沢蟹を食べるという。『捜神記』には、人語を喚き、領域を侵した者を虎に襲わせるとある。『和漢三才図会』には、これが天狗の祖と書かれている。

水木サンが『妖怪事典』に載せた人鳥は、アルゼンチンのラプラタ川河口にいて、巨大な鳥とも人ともつかない姿。ものすごい速さで人を追いかけて捕らえるとある。しかし、出典は不明。水木サンは、ラバウルで拾った『改造文庫』で見たらしい…。

日本にも、和歌山に人鳥がいて、夜半、少動物を捕らえてたべるが、人に害はないという。

さて、今回苦労して描いたのが、一番上の迦陵頻迦極楽浄土やヒマラヤに棲み、美しい声で歌う半人半鳥。その声は、の声ともされるが、芸妓・花魁の例えにも使われる。卵の中にいるうちから、鳴くとも、説法を説くとも言われる。『浄土曼荼羅絵』では、人頭鳥身で描かれるが、日本では絵に描いたような菩薩姿が多い。〈大徳寺〉の長谷川等伯による天井画を初め、各地に絵や石仏がある。大阪〈専念寺〉の迦陵頻伽が日本一美しいと言われる。作者は、〈聖護院〉門跡の女性僧侶で、表には出ないが、その世界では有名な人物らしい!

天高し鳥人ら皆麗し風来松