323. ワニ

現存する最も大型となる爬虫類。最大で、体長7m、体重1 tにも及ぶ。その外見は恐竜時代からほぼ変わっていない。なぜ、恐竜や魚竜がことごとく滅んだ白亜紀の大量絶滅を、ワニが乗り越えられたかは解明されていない。かつては草食種も多く、海に進出し足がヒレとなった種もいた。見ての通り強靭な咬合力を持ち、牛の大腿骨も噛み砕く。獲物を咥え身体を回転させる〈デスロール〉も知られる。咀嚼せず丸呑みする為、胃には消化を助ける胃石がある(恐竜と同じ)。ただ、なぜか口を開く力は弱く、顎をビニールテープ等で括られて捕獲される様子をテレビ等でよく見かける。足はガニ股で、のろまそうに思えるが、走ると16km/時! 知能も高く、木の枝を疑似餌のようにして鳥を捕らえたりする。寿命は大型の物だと、70〜80年生きる。免疫力も人より高い。歯は50回生え変わる。目からは乾燥を防ぐ為、涙が分泌される。西洋では、獲物を食べつつも涙を流すと言われ、偽りの感情表現として、シェイクスピアの『オセロ』や、スペンサーの『神仙女王』にも書かれている。

古代エジプトでは、ワニは豊穣や、ナイル川の象徴とされ、テーベではワニの頭をしたセベク神が信仰され、神殿内でもワニが飼われていた。パプアニューギニアやインドネシアでは、ワニを一族のトーテム=祖霊として祀る。一方、メキシコでは、テスカトリポカケツァルコアトルとが協力して倒した創世時の海の怪物シパクトリ、マヤでも人類を破滅に追い込む怪物チャク・ムムル・アインが、ワニっぽい。

さて、インドでもワニが神聖視され、日本の金毘羅大権現も、サンスクリット語で「ワニ」を意味する「クンビラーニ」から来ているという。中国では、鰐は体を震わせて雨を呼ぶとか、鯉のように天に昇ってになるとも言われる。漢字の「竜」も、「立」が頭、「田」が体、ハネが尾の、鰐を型取る象形文字。実際、中国にはヨウスコウワニがいるし、かつて明の時代頃まで、ハンユスクスという種もいた。後者は、鰐退治をした唐の韓愈から名付けられた。『東方見聞録』にも、鰐狩についての記述があり、『西遊記』の沙悟浄のモデルという説も(前にも書いたが、河童にしているのは日本だけ)! 日本にも30〜50万年前には、マチカネワニがいた!

中国から伝わった「鰐」は、日本では「和邇」となり、『古事記』、『日本書紀』、各地の『風土記』にも載る。有名なのは、『因幡の白兎』。ここに登場する和邇が、鰐なのか鮫なのかは、長年論争が絶えない…。確かに、広島の北、三次や庄原では、〈ワニ料理〉と称して、日持ちのいい鮫(フカ)を食べる。

妖怪では、島根の影鰐、これに似た鰐鮫、肥前松浦の巨口鰐=磯撫がいるがいずれも鮫と思われる。

悪魔では、ソロモン72柱サレオス。ワニに乗った厳つい姿。ただ、見かけによらず温和で、男女間に愛を芽生えさせる…。都市伝説では、アメリカの下水道では、捨てられたワニが巨大化しているという。そういえば、昔そんな映画があった(1980年『アリゲーター』)! UMAだと、ペルーにワニ男がいる。ある漁師が水辺にこれを案内し、その礼として見事、鹿を仕留める腕を貰ったという。

そんなワニだが、パプアニューギニアでは、食用とされる。筆者も一度だけ、〈愛・地球博〉会場で食べる機会があったのだが、鶏のササミのようで、悪くなかった!

さて、最後になるが、絵に描いたのは、ロシアの人形アニメ『チェブラーシカ』に登場するワニのゲーナ。動物園に勤める世界で一番素敵なワニである。ロシアがウクライナに侵攻して、はや3年…。かつて筆者がロシアを訪れた際に出会った村上春樹好きのユーリー教授はじめ、彼の地で出会った人々は、決して戦争を望んではいないと信じている。1日も早く戦火の消えることを祈る。

門付の鰐の踊るやお正月風来松