河童の妙薬の話は、東北・関東・四国を中心に、全国に伝わる。人や馬に悪戯をした河童が手を切られ、それを返すのと引き換えに薬の製法を伝授するという筋。効用は、骨折・打ち身・熱傷等に効くというもの。打ち身等は、河童の相撲好きから来ていると思われる。茨城小美玉〈手接神社〉には河童が祀られ、手の傷・病にご利益があるとする。同県那賀大宮にも河童の岩瀬万能薬が伝わる。新潟の猫山アイスは湿布薬。平成元年まで〈猫山宮尾病院〉で販売されていた(「アイス」は「酢和え」から)。この病院には、河童より伝授された骨接ぎも伝わる。
岡山には、狸から伝えられた狸伝膏(ばけものこう)が。高知では、1846年、名医・松井道順が、白髪山の怪物から、全ての病の原因と治療法の記された巻物を授かった!『土佐奇談実話集』によると、この怪物は朱色の髪と、星のような目と、黄色い一本角で五尺の巨体。不老長寿の貴精香を求めて白髪山に分け入った道順の前に現れ、長寿だった歴史上の人物(ノア・東方朔・武内宿禰)の事や、前に書いた徐福の話などをしたとある。
さて、『古事記』では、大己貴神(オオナムチノカミ)・少彦名神(スクナビコナノカミ)、中国では農神、『ギリシャ神話』ではヒュギエイア(〈WHO〉等のシンボルに、〈ヒュギエイアの杖〉が使用されている)等が薬の神とされる。
さて、描いたのは、〈新選組〉鬼の副長こと土方歳三の、〈石田散薬〉。水木サンの『河童の三平』の、カッパとタヌキと共演。彼の実家に伝わる、河童明神(もしくは蝦蟇)から製法を伝授されたという薬である。効用は、やはり、骨折・打ち身・捻挫・筋肉痛・切り傷。原料は、土方家のある東京日野の浅川で、土用丑に刈り取った牛川草(ミゾソバ)。服用方法は燗にした日本酒に溶いて飲む。一包二十銭(明治二年のビール一本分)というから、なかなか高価! にも関わらず、江戸以外にも四百の取次所があったと言うから、よく売れたようだ。〈新選組〉に出入りしていた松本良順の日記にも、〈日清・日露戦争〉の兵士も使用していたと記録されている。ただ、『とんと効いた試しがない』という話も…。実際、1948年の〈薬事法改正〉の折、無害だが無効とされ、販売中止となった。2007年から、イベントとして石田散薬を再現するというのをやっているらしい。是非参加して、手に入れたいものである。
バラガ忌や歳と河童と秘密の薬風来松