雲を見るのが好きだ。どれも美しく、創造的で、形を変えてゆく様も良い。いつまでも見ていられる。地上からの眺めは勿論だが、飛行機からの眺めも、また格別だ。おそらく、筆者同様、雲に魅せられた者は古今東西少なくはなかったろう。ジャン・クロード・モネら印象派の師匠的存在だった、青空と白雲の表現に優れた「空の王者」こと、ウジェーヌ・ルイ・ブータンもその1人だ。
ただ、意外にも雲の妖怪は多くない。名前に「雲」と入る雲外鏡も、雲自体とは関係がない。島根邑南町には、妖しの雲が伝わる。〈雲が淵〉に現れ、毎年下女を連れ去る雲なのだが、外敵が攻めてきた時には、城を包み隠したという。だが、ある時城主によって退治され、程なく城も攻め滅ぼされてしまった...。
神では、『日本神話』の天地開闢の段で現れた豊雲野尊。雲の神格化で、島根大田の〈物部神社〉や、愛知犬山の〈大縣神社〉等に祀られる。また、『ギリシャ神話』にも雲の神ネペレーがいる。ゼウスが妻ヘーラーに似せて作った雲より生まれ、ケンタウロスを産んだともされる。
そして、雲といえば孫悟空の乗る觔斗雲!「觔斗」は「宙返り」の意味で、悟空の仙術の師匠須菩薩に披露した際、宙返りして乗った事から。宙返り一つで、十万八千里を飛ぶ仙術。仙人にしか乗れない。ちなみに、『ドラゴンボール』の方は筋斗雲。こっちは、良い子にしか乗れない。(アラレちゃんは乗れた!)
創作では、石井桃子の『のんちゃん雲にのる』、『ムーミン谷の仲間たち』で飛行鬼のシルクハットから現れた雲、『竹取物語』で月人の乗ってきた雲などが思い浮かぶ。1983年に発表された小松左京の『首都消失』では、巨大な正体不明の雲に東京がスッポリ覆われた(1987年には映画化)。2020年のブラジル映画『ピンククラウド』は、人を死に至らしめる毒雲だった...! ジブリ作品でも、美しい雲が描かれている。『天空の城ラピュタ』、『紅の豚』...! 一応、司馬遼太郎『坂の上の雲』も、伊予人としては、名前を出さんわけにはいかんぞな。
地震の前兆と言われる地震雲の存在は、古くから世界各地で囁かれてきた。古代ギリシャ、古代インド、中国、イタリア...。日本でも江戸時代に、伊予の僧侶・明月が『通機図解』に記録。現代でも、衆議院議員であり、奈良市長も務めた鍵田忠三郎が、地震雲を研究。これにより、地震を予知して的中させたが、気象庁からは根拠が無いとして、否定された...。
描いたのは、井上雄彦『バガボンド』の柳生石舟斎。宝蔵院胤栄と2人、雲の上から何年も宮本武蔵を守っている。早く、続きを描いてくれー!
天高し残月くもの上に乗る風来松