10. 猫

筆者は大の猫好きである。そんじょそこらの、ちょっと可愛い女の子よりも、その辺を歩いてる猫の方がよっぽど素敵に見える♡

〈イエネコ〉は、ネズミを獲る目的に家畜化された〈リビアヤマネコ〉と言われる。最古の飼育例は9500年前のキプロス島で、高貴な人物と共に埋葬されているのが発掘された。

紀元前600年頃の古代エジプトの王墓の壁画にも描かれている。エジプトの愛の女神バステトも頭部が猫。ヘロドトスは、猫が死ぬと弔いの為眉を剃る話や、誤って猫を殺した外国人がリンチにあった話を記している。紀元前525年の〈ペルシウムの戦い〉では、盾に猫をくくり付けたペルシャ軍に対してエジプト軍は全く手を出せなかったという...!

イスラム教でも猫は、ムハンマドがこれを愛した事から尊ばれる存在。一方、ゾロアスター教では邪悪な獣とされる。

日本には奈良時代、経典を食い荒らす鼠退治の為、大陸より持ち込まれたという。平安時代の『日本霊異記』や『宇多天皇御記』に載る。

化け猫としては、鎌倉時代の『古今著聞集』に、奇妙な行動の猫は魔の変化したものでは...とあり、『名月記』にも、犬のように大きい猫跨が一晩で数人を喰い殺したとある。江戸時代の『耳嚢』には、猫は十年で喋り十五年で変化(へんげ)するとの話が。『甲子夜話』には常陸国の大山猫の話が載る。

『徒然草』で有名な猫又は、歳をとって尾が二つに分かれた猫が妖力を得たもの。人に化ける、人語を喋る、祟る、憑く、死人を操る、手拭いを被って踊る(笑)等という。年老いた母親に化けてすり替わる話も多く、『南総里見八犬伝』にもある。また、行灯の油を舐めるとも言われ、これはかつて魚油が使われていた事から。黄草子等には化け猫遊女がよく描かれ、やはり油を舐める。遊女の別名「寝子」も、猫からきている。

現在、猫の寿命は15年〜20年だが、かつては粗食だった為5、6年だった。猫又になる年数も、茨城県・長野県では12年、沖縄県では13年、広島県山県郡ではたった3年飼われれば、飼い主を殺すとされた。中国浙江省の金華猫は、月を見上げる白猫がこれとされ、年齢関係なく殺されたという。

また、江戸時代、尾の長い猫は化けると嫌われ、尻尾を切られた。この為、淘汰されて現在の日本の猫は尾が短いと言われる。

日本三大怪猫伝というのもあるが、これはまた別に述べる。

西欧では、ルネサンス期、猫は魔女使い魔とされ、生きたまま焼かれたりした。ベルギーでは、猫を高い鐘楼から放り投げる祭がある。「黒猫に前を横切られると不吉」というのはアイルランド発祥。スコットランドやハイランドの、猫の精霊ケット・シーも「猫の貴族」と言われるが、一時期悪魔扱いされた。「猫には九つの命がある」というのも、『ロミオとジュリエット』で引用され、『バットマン』のキャットウーマンも、死後猫の魂が宿り再生する。(演じた歴代女優NO1は、やはりミシェル・ファイファーだろう!)

世界中で、吉凶とも、神とも悪魔ともされる猫は人間にとって特別な存在である。 まぁ、猫にとっては迷惑な話だろうけど...。

かげろふや猫にのまるる水たまり芥川龍之介