動物の頭部に突きだした、硬く、骨質や角質の物。奇蹄目のサイのほか、ウシ・シカ・キリン等の偶蹄類(特に反芻目)に多く、攻撃や防御に用いられる。雄のみという種もあるが、ウシやカモシカは両性にある。トリケラトプス等の恐竜にも。
文化的には、権威・力の象徴とされ、兜や冠の装飾に使用された。生産性のシンボルともされ、古代において最も有用な家畜がウシであったことが起源と考えられる。土地を囲う柵に角や、ウニのトゲを置く風習も生まれた。ユダヤ教・キリスト教の祭壇にも力の象徴として置かれる。
神にも角に関するものが多い。ギリシャ神話のパンにミノタウロス、ゼウスは牝山羊アマルテイアに育てられ、自らも白い牡牛に化けてエウロペーを誘惑した。『旧約聖書』には中東の牛頭モロク神が。黙示録の獣も十本の角を生やす。北欧神話の始祖ユミルもまた、雌牛アウズンブラに育てられた。メソポタミア神話では、英雄ギルガメッシュに振られたイシュタルが、巨大な天の牡牛グルガンナをけしかけた。インド神話のシヴァは乳白症の牡牛ナンディに乗る。エジプト神話では、ラーの娘ハトホルが牡牛の角を持つ女神。中国の蚩尤も牛頭、日本の牛頭天王はスサノオと習合された。
悪魔は山羊の角の姿で描かれるが、ソロモン72柱のハーゲンディは牛の角。日本の鬼の角は、不吉な方角とされる丑寅からか。護符で知られる角大師は、良源が疫病が流行った際、鏡に映った自分の姿を描き写させたもの。
前に『毒』の回でも書いたが、ギリシャ・ローマ時代には、ユニコーンの角と称されて、サイの角(後にイッカクのそれ)が、解毒・てんかんの薬として売られた。また、北方民族の角杯も、毒が入ると泡を立てると言われ、ヨーロッパの王侯貴族の間に広まった。
実際に人に角が生えたという例も幾つもある。『日本書紀』には、加羅国の皇子都怒我阿羅斯等(ツヌガアラシト)には角があり(角のある兜か?)、彼が渡来した敦賀の由来となったとある。江戸時代の随筆『塩尻』には、有美濃国高須の松木村に住む武右衛門の娘に、3歳にして額に中指の太さの肉角が生えた。顔に瘡ができて、目も鼻も一つになって死んでしまった。その後生まれた女子が2人も、同様に皆死んだとある。19世紀のフランスや、現代の中国・インドでも報告があるが、医学的には角化症と呼ばれるものらしい。
角と言えば、結婚式の〈角隠し〉が思い浮かぶ。女性は嫉妬すると角を出すと言われる事が由来。一方、南欧では角は妻を寝取られた男を表し、「角をつけられた」は「妻を寝取られた」という意味らしい。
さて、絵に描いたのは、筆者が大ファンの往年のプロレスラー、スタン・ハンセン! 彼が掲げる手の形は、故郷テキサスの長い角を持つウシ〈テキサスロングホーン〉。決めゼリフの「ウィー!」は実は「Youth!」と言っていて、「若僧どもかかってこい!」という意味で発した。荒くれイメージのハンセンだが、実はとってもいい人で、現代はコロラドで余生を送っている。
淑気裂くテキサスロングホーンウィー!!風来松