人間を模した〈人工生命体〉の総称。
人造人間という言葉の初出は、1923年チェコのカレル・チャペックの戯曲『R.U.R』に登場する「ロボット」の和訳として、宇賀伊津緖が用いた。
まず、思い浮かぶのはフランケンシュタインの怪物だろう。1818年イギリスのメアリー・シェリーの小説『フランケンシュタインあるいは現代のプロメテウス』で、医学生ヴィクター・フランケンシュタインが化学と錬金術で作り出した、身長8フィートの怪物。ただ、実は感情豊かで、母親への愛情に飢えていたり、伴侶を持つ事を目的として行動したりした。あの、ツギハギだらけでネジが飛び出している姿は、1910年のユニバーサルの映画で定着。
映画でいうと、1982年リドリー・スコット監督『ブレードランナー』のレプリカントも代表的。原作は、ご存知フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』。ディックは監督と入念に打ち合わせもし、デモ映像もたいそう気に入っていたのだが、残念ながら完成を見ることなく亡くなった。原作は、題名にあるようにアンドロイドだったのだが、これだと機械のイメージが強すぎるということで、レプリカントが考案された。また、『ブレードランナー』というタイトルは、ウイリアム・バロウズの同名の小説から付けられた。
『ブレードランナー』の2年後、1984年に登場したのが、ジェームス・キャメロン監督『ターミネーター』。まあ、あのターミネーターT800=シュワルツェネッガーは、どちらかというと機械ぽかった。因みにこの映画、キャメロンが前作『殺人魚フライングキラー』で大コケした時に見た悪夢から作られたらしい…。
他にも、スピルバーグ監督の2001年の『A.I.』等もあるが、こうなると何が人造人間に当てはまるのか、分からなくなってくる…。カズオ・イシグロの『クララとお日さま』とか、それこそ『鉄腕アトム』とか。(これを原作にした浦沢直樹の『プルートゥ』も…)
さらに、宮崎駿『風の谷のナウシカ』の巨神兵となると、ちょっとデカすぎる気も…。原作では、人類全ての戦いに終止符を打つ為に作られた、人工の調停と裁定の神(人じゃないかーい?!)。なんと、その一体、オーマの抜け落ちた牙には、〈東亜工廠〉の文字が! エヴァンゲリオンも巨神兵へのオマージュで、あの歩き方は当時、映画製作に関わっていた庵野秀明の歩く姿を参考に作られたらしい!
では、何が人造人間らしいかとなると、やはりホムンクルスなんかは、それっぽい。ルネサンス期、錬金術師パラスケスが完成させたという。その作り方は、蒸留器に人の精子を入れ、40日間密閉。その後、毎日人の血液を与え、40週で完成する。体は小さいが、生まれながらあらゆる知識を有する。ただ、後にも先にも成功したのは、パラスケス一人。しかも、フラスコ内でしか生存はできない。『ファウスト』にも描かれている。
古くは、ギリシア神話のターロスがいる。クレタ島を守る自動巨人人形。ダイダロスの作とも、ゼウスが人類より前に作った青銅人の最後の一人とも。足にある釘を抜かれると、神の血を失い死ぬ。
チェコに伝わるゴーレムもいる。
日本では、1928年初のロボット〈學天則〉が西村真琴により作られた。文字を書いたり、表情を変えたり…上部の鳥が鳴くと、瞑想に入る。〈京都博覧会〉に出展された後、大陸へ渡ったが売却されドイツで行方不明となる。荒俣宏の『帝都物語』にも登場する。
最も古いところでは、平安時代に西行が行ったという反魂の術。西行作と言われる(怪しい)『撰集抄』の『西行於高野奧造人事』に載る。修行中、淋しくなって作ったが、色が悪く、吹き損じた笛のような声しか出せなかった為、高野山の奧に捨てた!?(ひどい!)
作り方は…
①人骨を完璧に並べる。
②砒霜(毒性の強い砒霜を練ったもの)を骨に塗る。イチゴと、ハコベの葉を揉み合わせ、藤の若芽等で骨を括り水洗いする。髪には、サイカイとムクゲの葉を灰にして焼きつける。
③土の上に畳を敷いて骨を伏せ、風の通らぬようにして、27日置いてから、沈と香を焚く。*作っている間は、断食!
西行は、③の沈と香を焚かなかった為、失敗したのだと、後に源師仲に聞く。実は、師仲は成功したのだが、これによって出来た人造人間の名を明かせば、それを行った術者自体も溶けてしまうのだとも!
その約百年後の『長谷雄草紙』にも、朱雀門の鬼と、双六勝負に勝った長谷雄が、美女を手に入れるが、百日を待てなかった為、水となってしまう話が載る。これは、鬼の骸を繋ぎ合わせて作られたもの。これ以外にも、鬼が人を作る話は少なくない。また、同時代の仮名草子には、あの安倍晴明が、師の伯道上人により、死んだ後に再生されたという話もある!
描いたのは、手塚治虫『火の鳥・未来編』の、シリウス12番の宇宙生命体・タマミと、筆者が大好きなキャラクター・ロック。この中で猿田彦博士も、人工生命体を作っていた。
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