欧米を中心に、世界に600万人の会員を有する友愛結社。自由・平等・友愛・寛容・人道を基本理念とする。もしくは…古くから、歴史を裏から操る秘密結社。その秘密は命を賭けて厳守される…。まぁ、その中間というのが、本当のところなのだろう。少なくともちょっと前(戦前くらい?)までは、前者の感はあったが、今や秘密もバレてしまったといったところか…。
入会資格は、一定の収入と、何らかの信仰を持つ成年男子。(女性でもマスターメイソンの親族なら外郭団体〈東方の星結社〉になら可)。入会費45000円。年会費8000円。自ら会員である事は公表していいが、他人のそれは禁止。また、月一度の集会場〈ロッジ〉にての政治・宗教の話も禁止。日本の〈ロッジ〉は、東京タワー隣の〈メソニックセンター〉内にあったが、現在建替中で、港区芝の〈グランドセクレタリー〉にある。因みに、〈フリーメイソン〉は個人を指し、団体名は〈フリーメンソンリー〉。
その起源は、1630年英国〈ウィンザー宮殿〉を造った568人の石工とも、ソロモン神殿、ピラミッドの石工とも、〈テンプル騎士団〉の生き残りとも言われる…。遅くとも16世紀頃には、石工の結社としての〈フリーメイソンリー〉が発生し、17世紀には〈薔薇十字団〉を模した秘密結社が生まれたと思われる。そもそも「メーソン」は「石工」、「フリー」は「きめ細かな石」だと言われている。
シンボルは〈プロビデンスの目〉。元々、キリスト教の意匠で、全能の神や三位一体を表している。アメリカの国章、1ドル札等にも描かれている。よく取り上げられる〈民主党〉本部の看板は、実は〈ペンタックス〉の物。他に、石工の定規とコンパス、フクロウ。「G」は、「ギルド」「神」「幾何学」等の頭文字と言われる。
何らかの信仰を入会条件としている〈フリーメイソン〉だが、キリスト教(特にカトリック)、イスラム教等からは嫌われていて、かつて教皇により破門されてもいる。逆に、モルモン教や、〈エホバの証人〉の創始者はフリーメイソンである。〈ロータリークラブ〉、〈ライオンズクラブ〉の創始者も。〈ボーイスカウト〉も初代副会長がそう。
フリーメイソンだと分かっている人物には、ワシントン、モンロー、トルーマン等、アメリカ合衆国大統領15人。ベンジャミン・フランクリン、カーネル・サンダース、マッカーサー、〈アポロ11号〉のバズ・オルドリン、映画界でもハロルド・ロイド、クラーク・ゲーブル、ジョン・ウェイン、リチャード・ドレイファス…と、錚々たるメンバー! フランスでは、モンテスキュー、ナポレオン、ビクトル・ユゴー、エッフェル…。ドイツでは、モーツァルト、ベートーヴェン、マルクス、ヘルマン・ヘッセ…。イギリスは、スウィフト、コナン・ドイル、チャーチル、ワット…。ロシアも、トルストイ、バクーニン、ツルゲーネフ、シャガール…。チェコのミュシャ、スイスのアンリー・デュナン、フィンランドのシベリウス、インドのネルー…と、きりがない。
では、日本はというと、最初の〈フリーメイソン〉は幕末の西周と津田真道。同時代の後藤新平、あのペリーも〈メイソン〉で、グラバーや、フルベッキ写真で有名なフルベッキもそうだと噂され、加藤将一の本などを読むと、明治維新の裏で暗躍したとされている。他には、鳩山一郎や、〈高須クリニック〉院長も…。
しかし、直近の話では、〈フリーメイソン〉も今や140万ほどに激減。日本でも250人程らしい。2006年に『ダヴィンチコード』の大ヒットで入会希望が殺到したが、それも一時的なもので、今や秘密の部分も知られる所となってしまったことが原因とまで言われる…。実は、直接の勧誘も禁じられていて、「チョットイイデスカ?」や「君、いい体してるね〜!」的なことは無理らしい。2011年には、Facebookで勧誘を始めた。2016年の熊本地震の際は大規模支援をしたり、2018年には、当時の日本支部代表が取材に応じたり、毎年、子どもチャリティイベント〈メソニッツこどもまつり〉を開催したりしている…。
まあ、最早〈フリーメイソンリー〉に拘らずとも、今の世の中には、怪し気な秘密結社的なものならわんさとある。より、オカルト色の強い〈イルミナティー〉、つい先日再任が決まってしまったドナルド・トランプで有名になった〈Qアノン〉。ガイ・フォークスマスクで、とにかく自由を脅かすものなら、〈サイエントロジー〉だって、ロシアにだってに噛みつきまくる〈アノニマス〉。Siriに特定の質問をした時に出てくる単語〈ゾルダクスセイアン〉なんて、謎すぎて面白いかもしれない…。
冬館書斎にコンパス掛りをり風来松