177. 錬金術

卑金属(鉄や鉛等)から、貴金属(金銀)を生成する術。広義には貴金属に限らず、様々な物質・生物・までも完全な姿にしようという試み!

起源は、古代エジプト・古代ギリシア。3世紀のパピルスに、金銀に別の金属を加えて、増量したり染色したりする方法が載る。4世紀には、パノポリスのゾシモスが錬金術に関する膨大な著を記し、ユダヤ婦人マリアは、密閉容器ケロタキス(バン・マリ)を発明した。

その後、錬金術は、イスラム圏で発展を見せる。9世紀ジヤービル・ブン・ハイヤーンらが『ジャービル文書』を記し、蒸留器具や、酸アルカリの概念も生み出した! その後も連綿と続く研究の中で、火薬・合金・ガラス・石鹸等が発明されていく! この時代の錬金術師達が信奉したのが、ヘルメス・トリスメギストス。「3重に偉大なヘルメス」の名の通り、一人はアダムの孫にしてピラミッドも作ったというヘルメス。もう一人はピタゴラスの師匠のヘルメス。最後は、医師で哲学者のエジプト人ヘルメス。の、3人を指す。魔術・学芸・技術...等の始祖。錬金術の別名は、ヘルメスの術! 唯一、賢者の石を手にした者とも言われる。

賢者の石とは、錬金術の触媒となる物で、霊薬とも、赤い石とも、黄色い卵型の物とも、液体とも言われる。

さて、時は移り11世紀の〈十字軍の遠征〉により、いよいよ西洋に錬金術が入ってくる。12世紀、イギリス人チェスターのロバートが記した『錬金術の構成の書』が、ヨーロッパで初めての書物。13世紀には、アルベルトゥス・マグヌスがヒ素を発見。同時代のトマス・アクィナスやロジャー・ベーコンも金属の生成の実験に関心を寄せたという。16世紀、スイスの医師にして錬金術師パラスケスが登場した頃が、錬金術の最盛期で、錬金術師も増加した。神聖ローマ皇帝ルドルフ2世は、プラハに世界各国から錬金術師を呼び寄せた。その中にはエクノ魔術ヴォイニッチ手稿の所持で知られるイギリス人ジョン・ディーもいた。17世紀になり、実践的な錬金術師も現れ、4大元素が否定されたり、続く18世紀にはアントワーヌ・ラヴォアジエの「質量保存の法則」と、33元素の発表等もあり、化学と錬金術は完全に分かれていく。ただ一方で、あのアイザック・ニュートンが、かなり錬金術に入れ込んでいたり、薔薇十字団や、カリオストロやら、サンジェルマンといった怪しげな面々により錬金術の研究は続けられていった。

一方、アジアでも錬金術は古くから存在した。インドでは、紀元前1世紀の『ヴェーダ』に既に載る。紀元前4世紀頃には、錬金術の達人の一人として、眼科医の祖といわれる龍樹(ナーガルジュナ)の名が挙げられている。また、中国でも不老不死の薬仙丹を作るの為の、錬金術が研究されてきた。

ただ、古今東西の錬金術や、賢者の石の探索は、いずれも失敗の内に終わった...。では、現代の科学ではどうなのかと言えば、ズバリ金は作り出せる! 加速器を使って、水銀と、ベリリウムを衝突させれば、その生成は可能とされる。ただ、それには、大がかりな施設と、膨大なエネルギーと、1グラムあたり10万年という時間がかかり、究極にコスパが悪い...。

寒鴉0金でも24金でも風来松