118. 火の鳥

…といえば、やはりフェニックスだが、そのその原型は古代エジプトの神聖なる鳥ベヌウだ。語源は「昇る」の転化。姿は鷺に似た金と赤の羽毛を持つ鳥。ラーアトゥム等のの魂とも考えられている。毎夜ヘリオポスの神殿の炎に飛び込んで死に、毎朝生まれる事から、太陽・金星の象徴とも、冥界の神・オシリスの魂ともされる。

ヘロドトスは『歴史』で、エジプトの東方に住むと書いている。タキトゥスの『年代記』には34年にフェニックスが出現したとある。ローマのソリヌスもエジプトで一羽捕まり、多くの人が見物したと記している。その寿命をプリニウスは540年、タキトゥスはシリウスの周期に基づき1461年とする。

アレイスタークロウリーは『ゴエティア』の中で、悪のフェニックスであるフェネクスについて、詩作に秀でているが、人型の時は恐ろしく聞き苦しい声で喋ると書いている。

ロシアにも、ジャール・プチーツァ=熱鳥がいる。炎のような赤い羽根を持つ。バレエや、絵画、絵本にも登場。

『ペルシャ神話』のフマは、雌雄半分ずつの体で、その影に触れれば恩恵を受けられ、頭に乗れれば王になれるという!

中国の四神の一、南・火・夏・朱を司る朱雀、そして鳳凰も、火の鳥と同一視される。後者は最も縁起の良い瑞獣霊泉だけを飲み、約百年に一度実をつけるという竹の実だけを食べ、梧桐にしか止まらない。元は殷の時代の風の神だったという。蜂須賀正氏は、カンムリセイランだと考える。メキシコにいる、ケツァールだという説もある。これは農耕神・ケツァルコアトルの使いとされ、その羽毛は最高位の神職か国王だけしか身に着けられなかった。

絵に描いたのは、ご存知、手塚治虫の『火の鳥』。ついこの間まで、改修中の道後温泉を覆う幕に描かれていた。今でも、あの大きなマンガ本が家にあるが、最初に見たのは小学校の若い女性の担任に借りてだった。先生にマンガを借りるなんて、なんだか不思議だと思ったのを覚えている…。

火の鳥の眺むる梅雨茸進化系風来松