12. 蛇

蛇もまた、四肢を持たない長い身体、脱皮する、毒を持つ等の特性から、死と再生を連想させ、嫌悪の対象になると共に、信仰の対象ともされてきた。

蛇は元々、白亜紀のオオトカゲの先祖に近いトカゲ。あのモササウルス科とも近縁という説も! 極地以外、ほぼ世界中に生息するが、ハワイイや、ニュージーランド、それから聖パトリックが追い払ったアイルランドにもいない!

かつては、「カガチ」(鏡のような目から?)、「ヘミ」、「ハミ」、「ウワバミ」、「カ」、「カガシ」、「ナガムシ」、「クチナワ」...等とも呼ばれた。

原始信仰では、大地母神として崇拝される例が多い。『中国神話』では、民族の始祖伏義女媧が共に蛇身人頭。インドのナーガ、古代エジプトでもファラオの王冠に描かれている。

WHOのマークで知られる、杖に巻き付いた蛇=〈アスクレピオスの杖〉は医療のシンボル。古代から中世にかけては、尾を食い合っている二匹の蛇=〈ウロボロスの蛇〉が、永遠の象徴として使用された。

日本でも、縄文時代の遺跡から蛇の土偶が出土。ねずみを獲る事から豊穣神穀物神田の神とされた。

一方、『聖書』では、危険な動物、悪魔の象徴とされる。ご存知エデンの園良心の木の果実を食べるようイヴに唆したのが蛇。その結果、人間は苦しんで子を産み、一生働き、死ぬと土に還る事となり、蛇は一生チリの間を這い回り、女の敵となった。

日本で最も知られる蛇の妖怪と言えば、『日本書紀』『古事記』にも載る、ヤマタノオロチだろう。出雲にて、スサノオノミコト八塩折の酒十拳剣で退治された。中国地方での神楽で良く見かけるが、長野県の〈山田神社〉には彼の魂が宿ったという蛇石が残る。しかし、これ、どうしても蛇というより、のイメージが強い...。

『メソポタミア神話』の原初の海の女神ティアマトも、その姿はウミヘビとも、ドラゴンとも言われる。メキシコのケツァルコアトルは「羽毛のある蛇」。ウミヘビでいうと、シーサーペント、『ギリシャ神話』のヒドラに、メデューサバジリスクはプリニウスの『博物誌』に載るがコブラがモデルだと考えられる。

妖怪では、まず『常陸風土記』にある、夜刀神。角の生えた蛇体の神で、目にするだけで一族皆滅ぶという。群れでいるというのも、なんだか恐ろしい。恐ろしいと言えば京の東山の七歩蛇も、これに噛まれて七歩歩くと死ぬ!(そういえばタランティーノの『キル・ビル』の〈五点爆心拳〉もこの技を受けて5歩歩くと死ぬんだった...)宇賀神は、人頭蛇身でとぐろを巻く姿をした

ウミヘビ系では、イクチ。常陸の海に現れる大海蛇で、油のようなものを残す。(「いくじなし」の語源とも)鳥山石燕の描いたあやかしも同じと思われる。

UMA系では、ツチノコ! これも土転び野づち等と同じものかも。

物語でも、蛇の登場するものは多い。有名な『道成寺』の清姫は蛇に変化して安珍を鐘の中で焼き殺し思いを遂げた。福島県沼沢湖の主沼御前は美女に化け、嵐を起こす。結婚した美女が実は蛇で、「見てはいけません」と言われてたのに見ちゃって正体がバレ、子を残して去るという蛇女房の話も各地にある。

そういえば、山口県岩国市の錦帯橋のそばで〈白蛇〉も何回か見た事がある。白い蛇は各地で神とされている。

昔はよく、蛇の抜け殻を財布に入れていた。暫くすると粉々になっちゃってなくなっていたが...。それほど、抜け殻も、簡単に見つかってたし、蛇もそこいらにいた。たまに、庭にアオダイショウも出たりして。あの頃は、いろいろ豊かだったなぁ...。

穴惑ひあの日巣食ひし蛇のまだ風来松