17. 口裂け女/はんざき

今回は、初の2本立て!

まずは、都市伝説の先駆けとなった、懐かしの口裂け女。1979年小学生だった筆者も含め、日本中を恐怖のどん底に陥れた...! 赤い服にマスク姿で、「私、きれい?」と聞いてくる。返答如何によっては、その手にした包丁や鋏で切りつけてくる。100m6秒なので、逃げるのも至難の業! ただ、苦手の「ポマード」と叫んだり、好物のべっこう飴で逃げられるとも。(当時流行ったゲーム『平安京エイリアン』にもアイテムとして、べっこう飴が登場した!)福島県郡上市や、神奈川県平塚市では、パトカーが出動。北海道釧路市・埼玉県新座市では集団下校が行われた...。

出所は1978年岐阜県。12月に噂が広まり始め、翌年1/26に『岐阜日日新聞』、6/26『週刊朝日』で報じられる。年末には、本巣郡の老婆が離れのトイレで口裂け女を見て腰を抜かしたという噂が広がる。騒動は年を跨ぐ。1979年6/21姫路市の25歳の女がイタズラで口裂け女の扮装でうろつき、銃刀法違反で逮捕。が、8月急速に噂は沈静化...。学校が夏休みに入った為だと言うが、騒ぎは約1年半に及んだ...。

一連の騒動のルーツは、様々に言われている。1975年の美濃国の〈郡上一揆〉。明治時代、危険な夜道を奇異な格好で恋人のもとへ通った女の話。日本統治化の韓国の類似した噂...。江戸時代にも、これとよく似た口の裂けた女の話が、『怪談老の杖』や『絵本小夜時雨』にある。

実は〈CIA〉が行った、噂の社会実験だったなんて話まである...!

さて、口裂け女はやはり哀しく痛々しい...。そこで、ハンザキにも登場願った。

ハンザキ=オオサンショウウオは、国の特別天然記念物。2000万年前から姿は変わらず、「生きた化石」とも言われる。語源は、山椒に似た香りからとも。別名のハンザキは、半分に割いても再生すると言われたことから。我が第二の故郷、広島県に多く生息していて、〈安佐動物公園〉では飼育・繁殖に取り組んでいる。江の川で保護された個体は国内最大の1.5m27kg。中国湖南省には、1.8m、200歳のものがいるという! その中国オオサンショウウオ、50年前に食用として来日したが、国産との交雑が進み問題となっている。

妖怪としての、大ハンザキの話も各地にある。有名なのは、岡山県真庭市、竜頭の淵に棲んでいたという10メートルの大ハンザキ。人馬を襲って喰っていたが、三井彦四郎に退治された。しかし、その彦三郎も大ハンザキの祟りで一族全て死に絶えたという。今では、〈ハンザキ大明神〉として祀られ、毎年夏には〈ハンザキ祭〉が開催されている。

創作では、井伏鱒二の『山椒魚』。カレル・チャペックの『山椒魚戦争』では人類と戦う。宮部みゆきの『荒神』に出てくる怪物も、ドラマ版ではハンザキめいていた。

さて、ハンザキ、お味はどうなのだろう?実はかの北大路魯山人の『料理物語』に、サンショウウオの項があり、『スッポンの臭みを抜いたような味で美味』とある! 長野県秋山郷では、これを黒焼にしたものが、疳の虫に効くとして食べられていたという。実は、父方の祖父から、愛媛県瓶ヶ森の瓶壷にいたシコクサンショウウオを捕まえて食べていたという話を聞いたことがある。どんな味だったかまでは、聞いた覚えがない...。

はんざきを喰らう女の口は裂きさすけ