22. 地獄

様々な宗教において、死後、悪行を行った者が罰を受けるとされる世界。一般的には、天国に対して地下というイメージ。

仏教では、六道の最下層。三途の川を渡り、閻魔大王の審判を受け、それに基づき様々な責め苦を受ける。そこには獄卒牛頭馬頭針口虫、そして等がいる。の色は、餓鬼の赤、畜生の黃、修羅の青で、これらを混ぜ合わせた黒が地獄の色とされる。ここでの服役期間を終えると、輪廻転生できる。

『古事記』では、黄泉平坂の先にある黄泉国が。『日本書紀』には、地獄にあたるものは無い。

キリスト教では、教派によって様々ではあるが、ゲヘンナがこれにあたる。8層あり、最下層には大魔王サタンが眠る。審判を待つのが冥界=ハデース。ダンテの『神曲』に詳しく描かれている。ヒンズー教では、ナカラヤマ神が裁く。イスラム教はジャハンナム。北欧神話ではヘルヘイム。女神ヘルが統べる。エジプトでは地獄は無く、マアトの羽根より重い魂は、鰐の頭、獅子と河馬の身体のアメミットにより食べられ、二度と転生もできない永遠の死を迎える...。

現実の世界でも、地獄に縁のある場所は多い。長野や登別の〈地獄谷〉。有名な別府の〈地獄めぐり〉は、いつから「地獄」と呼び出したかは、はっきりはしないが、1694年貝原益軒の『豊後紀行』には「地獄」の文字がある。1910年観光化が始まり、1928年油屋熊八が遊覧バスを開始。この時、初の女性バスガイド・村上アヤメが誕生した。

海外でも、中国の〈泰山〉、リスボンの〈地獄の口〉、ギリシャの〈ネクロマンテイオン〉は、冥界の王ハーデスペルセポネーを祀る神殿。トルクメニスタンの〈地獄の門〉は、1971年の事故以来燃え続けている崩落した天然ガス田だ。

アメリカ・ペンシルバニア州の〈地獄の7つの門〉は都市伝説。かつて惨劇があった精神病院跡とも言われ、そこにある7つの門は地獄へと通じているという。1つ以外は夜しか見えない。これまで、5つ目の門までしか通ったものはいないという。実際にはハリケーンにより地図から消滅した、へラムタウンシップのトードロードという場所で、地元民は観光客に迷惑しているらしい...。

描いたのは、1978年田嶋征彦の『じごくのそうべい』。今もシリーズが続く100万部超えのベストセラー。元は、上方落語の『地獄八景亡者戯』を、桂米朝が今風にアレンジしたもの。

地獄といえば、水木しげる先生は地元境港の〈正福寺〉で、幼い頃のんのんばあに連れられ、地獄絵図を見ていたという。筆者も幼少の頃から、五十二番札所〈大山寺〉の鐘楼のなかにある、地獄絵図を見てきた。この寺は、豊後の真野長者が海難にあった際、十一面観世音菩薩に救われ、その御礼に一夜で建立したという。

三尺寝する間の地獄巡りかなエエ線