209. フィンランド

この北欧の国は、筆者にとって最も馴染み深い国である。おそらく生まれた時には既に本棚にトーベ・ヤンソンの『ムーミン・シリーズ』が箱入りで揃っていたと思われる。ただ、長い間それはちょっと不気味な存在で、挿絵こそ見たりはしていたが、ちゃんと読まれることはなかった。むしろ、アニメの『ムーミン』の方は見ていたし、手作りだったのかムーミンのぬいぐるみをいつも抱えていた。(ライナスの毛布のように)何度も祖母に洗濯機に放り込まれ、最後の方には謎の生物ぽくなってしまっていたが...。

大人になり、改めて読んで大好きになりトーベの他の著書も読んだ。かみさんも、フィンランド好きで、結婚より前に二人でフィンランドへ旅行した。ミカ・ハッキネンらF1ドライバーを応援し、カウリスマキの映画も観て、実は今日が夏至なのだが、フィンランドのヘビメタバンド、〈ローディー〉と〈コルピクラーニ〉をかけつつ、夏至祭をやっている!

さて、そんなフィンランドだが、改めて調べてみると、森や湖の中に見知らぬ妖怪がわんさと潜んでいた!

クラッティパラは猫や若い雄鶏の姿。人の家から金品を盗む。夜は空飛ぶ火の精となる。メツァンネイツィトは別名森の乙女。その名の通り若く美しい姿で、若者を森の奥へ誘い込む。背中はうろや切株! オウダもこれとよく似た森の精霊で、裸の男女の姿。足が後ろ向きについている。踊りやレスリングに死ぬまでつきあわされる...! リーオキも、夜の森を松明を手に彷徨くが、こちらは森に葬られた子どもの霊。動植物の守護神とも言われる。ルオットチョジクもトナカイの守護霊。サーミに伝わる女の精霊で夏、ツンドラに放たれるトナカイ達を護る。ナッキは、フィンランドの河童。川、橋、井戸に住み人を溺れさせる。これまた美男美女に化ける。ケカル地方オップ湖のソヨトーロールは、漁師と魚に混乱をもたらす。普段はルーン石に封じられているが、霧の日に現れる。

森に関する言い伝えも多い。森の鼻(メツァンネナ)は、森の精霊の怒りで両目がビクビクしたり、肌がカサブタだらけになる事。森のベールも、森の王タピオの機嫌を損ねた者が異界に連れて行かれるというもの。そこは全てあべこべの世界で、服を裏返しに着れば逃れられるという。森に住んでいる熊も神格化されており、花束のついた手の平(メジカンメン)といった隠語で呼ばれる。その爪は歯痛に効くとされたり、9まで数が数えられるとか、9人力を持つとも。

夏至の魔法(コハンヌスタイカ)も、多くある。夏至の日に井戸を覗くと結婚相手が見える。7種のハーブを集めて枕に入れて眠ると結婚相手が見える。穀物畑をこの日に裸で周ると、結婚相手が現れる。などなど...。やたら、結婚の事ばかりだが...。

そんなフィンランド人、ヨーロッパ一、迷信を信じないという話が...。しかし、スオミ、幸運を祈って木を叩いたりはしてるけどなぁ...?

チューリオあの人達の夏至祭の幕上がる風来松