288. 幽霊列車

幽霊機関車偽列車とも。

真夜中に走る幻の列車。汽笛の音や走る音だけの場合も。明治時代、蒸気機関車が導入された頃、日本各地で語られた。柳田國男はの音真似とし、民話研究の佐々木喜善は当日、怪奇記事を好んで取り上げた新聞記事が元ネタとする。

常磐線では、逆方向から走ってきた夜汽車が、急ブレーキをかけた途端消える怪異が相次いだ。ある時、そのまま汽車を走らせた所、の骸が残されていたという。亀有の見性寺に塚がある。

大阪空襲の夜に走ったという幽霊列車も知られる。心斎橋から梅田間を被災した人達は確かに乗ったと証言しいるのだが、実際は運行の事実はないという...。職員用のダイヤだったのではとも言われる。

現代のモンゴル自治区包頭市でも、監視カメラに幽霊列車が映っていたという事件があった。

ただ、不思議と西洋において、この手の妖はみつけられなかった...。

創作では、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』。『銀河鉄道999』のそれは、機械人間用の生身の人体を運んでいた。モデルはマレー式機関車〈チャレンジャー〉。『ゲゲゲの鬼太郎』のものは地獄行き。『鬼滅の刃』の無限列車も記憶に新しい。『きかんしゃトーマス』にもティモシーというゴーストトレインがいる。

都市伝説では、きさらぎ駅が少し前に話題になった。〈2ちゃんねる〉の掲示板の「先程から某私鉄に乗車しているのですが様子がおかしいのです。2004/01/08 23:1800葉純」という書き込みが発端。翌朝未明までスレッド参加者との間でリアルタイムの応答が続けられ、漸く見知らぬ駅で下車するも、次々と奇妙な現象に見舞われ、通りかかった車に乗せてもらったところで、連絡は途絶えた...。マンガ化、小説化、映画化もされ、モデルとなった遠州鉄道には国内外から観光客が押し寄せた。鉄道側は迷惑がるどころか、記念乗車券を発売したと言うから、商魂たくましい!

句は、松山にいた夏目漱石が正岡子規に送った一句。丁度、漱石が来松した明治29年に、一番町―小町間で伊予鉄道が開通。おそらく汽車に化けたんは、東雲神社辺りに棲む毘沙門狸ぞな。

枯野原汽車に化けたる狸あり漱石