95. 呪い

人・霊が物理的手段でなく、霊的・精神的な力で、他人・社会に災厄・不幸をもたらしめる行為。

「呪う」(のろう)だと、恨み・憎しみのある人に対し、災いがあるよう神仏に祈る。

「呪う」(まじなう)だと、災いや病を取り除くよう、神仏に祈る。

もともと、祝詞(のりと)と同じ語源の「宣る」(のる)から来ていて、古代の言霊信仰に端を発する。漢字の「呪」(じゅ)も、神に祈る巫女の姿の象形文字。「祝」も、同様。

特に神仏による懲罰的なものを、「祟り」という。また祟りを行い恨みを持つ者を、 怨霊と呼ぶ。日本三大怨霊は、菅原道真、平将門、崇徳天皇。

さて、(呪い)といえば丑の刻参り。白装束、頭に五徳と三本の蝋燭、藁人形に五寸釘。(この釘、普通には売られてないらしいが、ネットだと案外すぐ購入可)。口に櫛を咥えたり、参詣後寝ている黒牛を跨ぐという説もある。七日間で満願だが、この間、人に見られると無効。元々は、貴船明神が、丑の年・丑の月・丑の日・丑の刻に降臨したことによる。因みに、貴船神社は夜間は閉まっちゃうので、実際丑の刻参りは、不可能である...。

その起源とも考えられるのが、宇治の橋姫

妬む相手をとり殺す為、貴船神社に祈り鬼神となった。『平家物語 剣之巻』には、恨みを晴らした姫はその後も縁者を殺め続けたが、渡辺綱により片腕を切り落とされ、安倍晴明に封印されたとする。 あれ?これ、他の話と混ざってるな...。

人形を用いた呪いは、古くは『日本書紀』にも載る。平安時代の『将門記』には、将門を恐れ、陰陽道の占いの器具に彼の人形を置き祈った...とある。また、『栄花物語』にも、藤原道長の子・教通の妻が、寝床として使われていた帳台の上に楊枝を置くという呪詛により、出産直後に死亡したという話が。

海外には、ブックカースがあり、これは中世、盗難防止の為、本の奥付け等に記載された呪いの言葉。

呪いで有名といえば、ピラミッドのツタンカーメンの呪い、阪神タイガースのカーネルサンダースの呪いが思い浮かぶ。

創作で言えば、描いた鈴木光司の『リング』!

原作は1991年に書かれ、1998年中田秀夫により映画化され、大ヒットした。元ネタは、明治末の帝大教授・福来友吉と、霊能力者・御船千鶴子らによる〈千里眼事件〉。作品は、とても秀逸な出来で、恐怖を煽るだけでなく、サスペンスフルで、呪いのビデオという現代的な小道具と、横溝正史の金田一シリーズ的なムードが見事に融合。役者陣も良い演技だった。原作の完結編である3作目の『ループ』では、SF的な驚きの結末を迎える...!

さて、実は呪い返しなるものも存在する。身近なところでは、盛塩、人の息を対象物に吹きかけるいぶき等...。陰陽師は、人を呪殺しようとする時、呪い返しを覚悟し、墓穴を二つ掘る。「人を呪えば穴二つ」。

丁寧に柿剥くひとを憎みけりはすみ