427. 鼠

ヒトとネズミの付き合いは長い。農耕の始まる3000年前の1万5000年前にまで遡る! 日本でも高床式倉庫のネズミ返しから分かるように、弥生時代にはいたらしい。古今東西あらゆる場所に生息して、食料を喰い荒らし、疫病を流行らせる為、害獣として忌み嫌われてきた…。

一方で、「ネズミ算」という言葉があるように繁殖力が旺盛な事から、子孫繁栄の象徴ともされ、神聖な動物ともされた。干支でもトップバッターだ。『古事記』では大国主命素戔嗚命から野に放った鏑矢を取ってくるように言われるシーンで、鼠に助けられる。大国主命と習合した大黒天も鼠を神使とし、中国西域でも毘沙門天の眷属とされる。そんなところから、昔話の『おむすびころりん』の元となった、御伽噺『ねずみ浄土』も生まれたのだろう。「ねずみ」の語源も、「根の国に棲む」から来ているという説がある。柳田國男の『海上の道』には、沖縄では鼠は【ニライカナイ】から来た【神使】とされ、害獣として捕らえた時も海に流して送り返した…とある。

因みに、インドでも鼠はガネーシャの乗り物、韓国でも北から来る悪神を防ぎ人々を幸せにすると言われる。ローマでも吉運の象徴とされる。

ただ、やはり中世ヨーロッパではペスト等の伝染病を運んでくる不吉の象徴とされ、概ね印象は悪い。

鼠の妖怪も多々いる。これまでにも、鉄鼠頼豪鼠)・火鼠小玉鼠海鼠…と書いてきた。他にも旧鼠は歳を経て妖怪化した鼠。『絵本百物語』には出羽の国に出たとあり、『翁草』には香川で猫又と戦ったと載る。大和でも猫を食べたと伝わる。北宋の『太平広記』には、人間の娘と契ったと書かれている。仙鼠も同様に百年生きた鼠がなるとされ、その姿は蝙蝠!『仙経』には千年経たものが、白い蝙蝠になるとある。あの白居易も詩に詠んでいる。『和漢三才図会』の水鼠は、『本草綱目』からの引用として「水鼠は鼠に似ていて体が小さく、菱・芡(おにばす)・魚・蝦を食べる。あるいは小魚、小蟹の化したものであるともいう」とある。『神異経』に載る氷鼠は、北方の氷の中に棲みこれを食べれば熱を退かせ、この毛皮に寝ると寒さを感じるという。山口・徳島の犬神鼠憑き物で口が裂けていたり、尾が三つに分かれていたりする。山口県阿武郡相島のそれは、口が長く七十五匹の群れをなすと言われる。

また、スペインのラトンシートペレスや、南米のラトンペレスは、歯の回でも書いたいわゆる歯の妖精。筆者も子供の頃、上の歯が抜けたら縁の下の鼠に…と放っていた。これ中国・台湾・韓国でも同様らしい。一生伸びる鼠の歯にあやかろうという事だろう。

20世紀に入ると、俄に鼠は愛らしいキャラクターとして描かれ始める。お察しの通りきっかけは、1928年ウォルト・ディズニーが生み出したミッキーマウス! その後1940年『トムとジェリー』のジェリー、1950年の『ナルニア国物語』にもリーピチープが、1958年イタリアのトッポ・ジージョ、1967年オランダのフレデリック…。

日本でも1963年『ぐりとぐら』、1975年『ガンバの冒険』、最近では1996年世界的に大ヒットした『ポケットモンスター』のピカチュウ!

絵に描いたのは同じく大ヒットの小野不由美の小説、1992年の『十二国記』の登場人物半獣の楽俊。主人公・中嶋陽子が向こうの世界で出会う初めての信頼できる友人。人気投票でも第一位!

去年今年吉凶綯い交ぜ人と往く風来松