423. 侗族

〈トン族〉。自称〈カム〉。中国の少数民族で、人口は250万人程度。貴州省、湖南省等に多く住む。美しい刺繍技術や、優れた木造建築で知られる。

歌が生活の中心で、歌垣もしばしば行われる。春節の頃の祭り〈トン族大歌〉は、〈ユネスコ無形文化遺産〉。その中には、彼らの女神の歌、空飛ぶ牛の歌、人喰い妖怪の歌もある。彼らの歌は、2025年空前の大ヒットとなった中国のアニメ映画、那托をモデルにした『哪吒之魔童閙海(ナタ2)』(興行収入は約3100億円!世界の歴代興行収入で第5位!)のオープニングにも使用された。

筆者は、好きな映画の一つ1999年の中国映画『山の郵便配達』で、初めてトン族の存在を知った。山奥にある彼らの集落は、まるで桃源郷のようだった…。

トン族は、アニミズム的な宗教観を持っており、山・川・石・木…等にが宿ると考えている。チュイという精霊・鬼が信じられていて生鬼獣鬼猫鬼…等がいる。それらが憑いている鬼憑きの家は、他人を害する力があるが、忌避もされた。毒気悪魔を祓う事も行われる。

トン族の最高神は、薩(サツ)薩瑪(サツマ)薩歳(サツサイ)…等と呼ばれる蜘蛛の形の女神。貴州省南部では、村ごとに祠があり、三月にサマ祭りが催される。サマは母系の始祖であり、勇敢で好戦的なヒロインだ。平和・繁栄・豊作を守るとされる。この祭りでは、藁ので村を清めたり、藁で悪霊祓いも行われる。

また、これとは別に四匹の亀から世界が生まれたという創世神話や、手長足長に似た長手杆長脚杆順風耳千里眼、射日神話等、中国に影響を受けたと思われる話も伝わる。世界各地に見られる洪水神話や、兄妹婚姻譚もある。

実は、稲作が古代長江文明が起源とされる事から、トン族が日本人のルーツではという説がある。確かに一見、日本人のような風貌だし、食文化や、伝説の中にも日本と似た物はある。ただ、遺伝子レベルで見ると、共通する部分はあるにせよ、それほど近いグループというわけではないらしい…。

さて、彼らの隣人とも言えるのが、ミャオ族(自称モン族)。前にも書いた事があるが、あの黄帝と戦った蚩尤をらの始祖とする説もある。やはり、歌垣が開かれ、アニミズム信仰である。彼らの創世神話では、楓香樹から生まれた蝶メイパンメイリュウが産んだ十二の卵から、や水牛と共に人間も誕生。大洪水や、兄妹の物語も共通する。また、蠱毒も盛んに行われていたという!

とても興味深い中国の少数民族…いつか、彼らの村を訪れてみたいものだ…。

山目覚むトン族の娘の歌声に風来松