24. 封/のっぺらぼう/太歳

紀元前240年頃。秦の始皇帝は、医師・徐福に命じ、東方の三神山にあるという不老不死の霊薬の探索に向かわせた。徐福は秦には戻らなかったと言われる。日本には、秋田・熊野・京・八女・佐賀...等各地に、いわゆる徐福伝説が伝わる。

それから約1世紀...中国の王朝が漢になった頃、長年書き続けられてきた地理書『山海經』が完成。そこには、肉の集まった牛の肝臓のようなもので、目が2つあり、食べても無くならない視肉が記されていた。

後漢の頃、太歳が恐れられていた。木星の鏡像となる仮想惑星なのだが、これが土中を移動する肉塊とされ、『家を建てる時これを犯してはならない』とか『これを掘り起こした為一族滅亡した』等と書物にも書かれている。やがて、神格化され太歳星君となったが、『封神演義』では太公望に封じられている。

1609年。日本の静岡県駿府城。徳川家康は、庭に子供位の大きさで、天を指しているような肉塊のようなものを見る。部下に命じて山に捨てさせたのだが、後に「それは中国の『白澤図』にあるだったのでは...」と残念がられる。を食べると強大な力を得られるという。

1776年。鳥山石燕は『画図百鬼夜行』にぬっぺっぽうを描く。顔と体の区別も、目口鼻も無い肉塊という姿。これがやがて、人型で顔に目口鼻の無いのっぺらぼうとなる。

時は流れ、世界は第二次世界大戦に突入していた。そんな中、食糧難に陥っていた日本で、粘菌学者・萩原博光は粘菌の高タンパク質に注目し食糧化を試みていた。が、戦争の中でうやむやになってしまった...。

舞台は中国へ戻る。地中から、芳香を放ち美味だという〈肉霊芝〉または〈肉万年茸〉と呼ばれるものが掘り出されていた。色は、黄・茶・灰・白・黒...と様々。無数の目が付いたものまであるという。傷つけても内部から液体がにじみ出て再生する!

今世紀に入ってからでも、2005年広東省。2008年陝西省のものは、水をかけると変形し、調査の結果生命反応が確認されたという。2016年遼寧省で発見したワン・チェンドーは、70kgのそれを1kg35000円で売却。2018年黒竜江省の楊は、なんと太歳で酒を造ってしまった! 実物が見たければ、〈西安兵馬俑博物館〉近くの施設に、千年太歳というのが展示されている。

さて、もうお察しの通り、これらは同じものではないだろうか...。自己治癒力を持つ粘菌? 一度、見るか食べるかしてみたいものだ...!

太歳ぐぐれどぬっぺらぽうの日永風来松