69. 酒

酒といえば、やはり酒呑童子。酒好きの為部下が呼び始めたらしい。しかし、神変奇毒酒を飲まされたのが命取りとなり、源頼光に討たれた。父親はあの八岐の大蛇、もしくはその血を引く伊吹の弥三郎。そして、彼もまた婚礼の際、酒を呑み正体を現してしまい斬り殺されたという。八岐の大蛇にしても、素戔嗚尊八塩折之酒(ヤシオリノサケ)を呑まされ退治された。(『シン・ゴジラ』でも、ここから取った「ヤシオリ作戦」が出てきた。)

この酒、沢山の木の実・果実・雑穀から作られているとの記述がある。最古の酒と言われる7000年前の中国の酒も、果実・穀物・蜂蜜が原料だったという。因みに、ワインは5400年前のイランで、ビールは3000年前のシュメールで発見されている。

八岐の大蛇に限らず、「蟒蛇(うわばみ)」の言葉通り、大蛇は酒呑み。酒処・東広島市西条の酒まつりのキャラクターのん太のモデルは、〈旦過寺〉に棲む化け狸。和尚に化け灸で村人を助け、そのお礼で酒を買っていたが、飲み過ぎた事で灸の力を奪われてしまう。愛知県半田にも新酒を盗む古狸の化けたのた坊主がいる。千葉県の酒々井狐も酒好き。前に書いた猩猩も。

鹿児島県西南の、その名も猩々ケ淵や、鎌倉時代の『古今著聞集』に載る岐阜県養老市の養老の瀧は、酒の湧き出る酒泉として知られる。後者は元正天皇が、この名水を飲み元号を「養老」とした事や、あの居酒屋でもよく知られる。

酒のといえば、『ローマ神話』のバッカスゼウスと人間の女性との間に生まれるが、母は焼死。バッカスは、ぶどう栽培とワイン造りを伝える為放浪し、放埒な祭りを行ないながら信者を集め狂乱に耽った。『ギリシャ神話』ではデュオニュソス

日本の酒のは、大物主大神少彦名命。〈日本三大酒神社〉としては、奈良県〈大神神社〉・京の〈梅宮神社〉・〈松尾大社〉がある。

描いたのは、水木しげるのもう一つの代表作『悪魔くん』に登場する、第七使徒・妖虎。戦う時には風虎なる赤い虎の姿となり、体に蓄えたアルコールを燃やして火炎を吐く。普段は穏やかな老人の姿で、究極の酒を求めて世界を放浪している。〈酔拳〉の達人でもある。その〈酔拳〉も、正式には〈酔八仙拳〉といい八人の仙人の酔った姿から作られた。

この句の俳人・壁無心も、もちろん酒呑みというか、酒を愛する人物。筆者が寄らせて(酔わせて)もらってる居酒屋〈ホヤケン〉で出会った。この俳画集も、その〈ホヤケン〉で開催されている〈ハイミー句会〉から生まれた。

秋隣酒呑みはいつも酒呑み壁無心