351. フィラデルフィア実験

1956年ラモント・ハッシー天文台に勤める天文学者にしてUFO研究家モーリス・ケッチャム・ジェサップは、元船員カール・メレディス・アレンなる人物から、一通の手紙を受け取る。そこには、1943年10月28日〈フィラデルフィア海軍工厰〉で、とある実験が行われた事が書かれていた。護衛駆逐艦〈エルドリッチ〉が、360km離れた〈ノーフォーク海軍基地〉に瞬間移動したというのだ! 後にフィラデルフィア実験と呼ばれ、世界最大の都市伝説とも言われるようになる...!

元々は、アインシュタインの統一場理論(場=粒子は半径を持たない無限に小さなもので、あらゆる物質は相互作用力で引き合うことなく起こり得ない)の実験で、正式名〈レインボープロジェクト〉。兵器のステルス化の為のものだったという。

艦には発電所レベルの3本の巨大なコイルが設置された。実験開始と共に海面から湧き出した緑色の光が船体を覆い、やがて発光体は幾重にも艦を包んでいった。そして、空間が歪んだように見えた直後〈エルドリッチ〉は、跡形もなく消失した...! 同時刻、〈ノーフォーク海軍基地〉に突如出現した〈エルドリッチ〉は、数分間(もしくは6時間)存在し、再びフィラデルフィアに瞬間移動した...。船内を調査すると、大きく破損していただけではなく、船員が自然発火して炭と化していたり、船の金属と体が一体化してしまっている者もいたという...。死者、行方不明者は16人。機械室にいたエンジニア達のみ無事だったが、その後体調を悪化させたり発狂した者も...。

海軍上層部はこの実験を隠蔽。公式な記録は存在しないとした。1996年〈海軍研究局〉が調査を行い、実際に行われたのは機雷に対する消磁、高周波発電の実験だったと発表。また当時、記事が載ったという新聞も存在しないとした...。さらに2017年にも改めて、当時〈エルドリッチ〉がフィラデルフィアに寄港した記録は無い事も公表した。

だが、実験は2度目も行われたという話もある。その時も艦は消失。乗組員は電子レンジで焼かれたかのように溶解し、骨だけとなっていたという...。

この事実を世間に公にした、前述のジェサップは身の危険を察し、友人のアイヴァン・サンダースンに多くの資料を引き渡した後、自分の車の中で怪死した...。

その後も、様々な実験が今に至るまで極秘裏に継続され、〈プラズマビーム砲〉〈低周波発生兵器〉〈電磁パルス兵器〉、1980年頃には〈亜空間トンネル〉の創出にまで成功したとか...。現実に電磁波を応用した地震兵器〈HAARP〉も、これらの実験の結実した物だという。

筆者がこの話を初めて知ったのが、1984年ジョン・カーペンター製作の映画『フィラデルフィア・エクスペリメント』だ。当時はモデルがあるとは知らなかったし、よく似た『ファイナル・カウントダウン』と混同してしまってもいる。ただ、後者が、カーク・ダグラス、マーチン・シーンという豪華出演者なのに対し、前者はテレビドラマのエセスーパーマン『アメリカンヒーロー』のマイケル・パレと、『ロボコップ』のナンシー・アレンというB級ぶり!

それはさておき、実はこの実験には、ふたりの超大物が関わっていた...!(つづく)

海市からフィラデルフィアの海市へと風来松