456. カリアッハ・ヴェーラ/モラン

カリアッハ・ヴェーラは、ケルト神話に登場する冬の妖精。ゲール語で「青い妖婆」の意。巨人のごとく大きく、痩せた老婆の姿。ケルトでの1年の始まり11月1日の〈サウィン〉に現れ、日差しを遮り雪を運んでくるという。手にした杖で叩くと、大地は固くなり、岩や川は凍てつき、木々は全ての葉を落とす。鹿の群れを従えていて、冬眠をしない野生動物の守護者とも。冬が終わる5月1日の〈ベルティネ〉が来ると、杖をヒイラギの木の下に放り込み、灰色の石に姿を変える。

彼女のバスケットから落ちた岩で、この地の多くの山や丘ができ、〈ストーンヘンジ〉や、その他の立石群も同様だという。また、ハンマーで山や丘を作ったとも。

スコットランドの西岸の島々の間にある大渦〈コリーヴレッカン〉で、カリアッハ・ヴェーラがタータンの肩掛けを洗うとそれは真っ白になり、大地を覆う雪になると伝わる。その時は三日三晩、暴風雨となるという。また、同国の山あいの小さな石を祀った場所では、冬には石を小屋に、夏には外に出す風習が長く守られてきた。

カリアッハ・ヴェーラの存在は、アイルランドのハイランド地方・マン島、スコットランド等で語り継がれ、スコットランドでは、冬の女王イザベラとも同一視される。また、夏の女神アイネまたはブリギットとは姉妹とも言われる。

さて、この話を聞いて思い出すのが、絵にも描いたトーベ・ヤンソンの『ムーミン』に登場するモランだ。世界一冷たい大きな灰色の冬の魔物。吐く息は霧氷となり、歩いた道は凍てつく。座った場所には何も生えなくなる。いつも孤独で、皆から嫌われ恐れられている。その為、火や灯りに暖かみを求めて近寄ってくる。『ムーミンパパ海へいく』では、彼女の為にカンテラを灯し続けたムーミントロールにより、寒さと孤独から解放された。

また『ムーミン谷の冬』の氷姫もよく似た存在だ。彼女を見たものはコチコチに凍ってしまう。しっぽの立派なリスも彼女を見つめてしまい凍死する。しかし、最後に息を吹き返したと思われる描写をトーベは用意していた。

長く辛い冬の先にも、きっと春は訪れるという願いなのだろう。実は前述のカリアッハ・ヴェーラにも、冬が終わると石になるのではなく、美しい娘の姿をした夏の女神ブリギットに生まれ変わるという説もある!

冬の精夏に焦がれて彷徨えり風来松