437. 老化

唯一聴いている高橋源一郎のラジオ番組で、小林武彦著『なぜヒトだけが老いるのか』が紹介されていた。老いるのは、ヒトとシャチとゴンドウイルカだけだと聴いて驚いた! 野生では老いる前に死んでしまうと聞いてなるほどと思った…。ヒトの自然寿命は38〜55歳らしい。そう言えば、夏目漱石は49歳、秋山真之も49歳、小泉八雲は54歳で亡くなっている。(いつの間にか父親の歳ばかりか、彼らの歳も越えて生きていたのか…!)

なぜ、我々が長い老後を生きるようになったかというと、集団の中で技術や知識を持つ年長者がいる方が進化において有利だったせい(おばあちゃん仮説)と言う説がある。シャチ・ゴンドウイルカも社会性が高く、集団で子育てをする。

2024年の調査では日本の平均寿命は、男81.09歳、女87.13歳で、これは世界第一位! スイス・韓国・シンガポール…と続く。都道府県別では、男は滋賀・長野・京都、女は長野・岡山・島根…。残念ながら、わが愛媛の男はワーストに近い…。

ギネス記録は、フランスのジャンヌ・カルマンの122歳164日。秘訣はオリーブオイル! 現在存命では、イギリスのエセル・ケータハムの116歳。生物学的にも120歳あたりが限界と言われる。

ギネス非公認となると、インドネシアの146歳、エチオピアの162歳、中国の256歳、インドの280歳…と、凄い御長寿がゴロゴロいる…。記紀に伝わる武内宿禰は317歳だったと言われる…! 奈良の千草村にも幼い頃天狗に攫われ、別れる時に貰った団扇のおかげで長生きしたという380歳の男の話が伝わる。ウイグル族も長寿だが、その秘訣はお茶・ヨーグルトらしい…。

さて、長寿というか高齢の妖怪は多くいる。付喪神は百年を経た物の妖怪化だし、千年毎に尻尾が一本生える九尾の狐はじめ、年取った獣も青森・秋田の経立(ふったち/ふりたち)のように、非常に長生きした動物が化ける。人間でも、爺系では子泣き爺山爺百々爺ぬらりひょん…。一方、婆系では砂かけ婆を筆頭に納戸婆古庫裏婆糸繰り婆白粉婆火消婆箕借ば小豆婆蛇骨婆…と、数が多い。これは、遠野のデンデラ野のような、姥捨山が起源だという説もある。

海外ではエルフは500〜1000年を生き不老不死とも。ドワーフも高齢と言われる。ガンダルフは、55000歳らしい…!

長寿の神といえば、七福神寿老神不死の霊薬を含んでいる瓢箪を運び、長寿と自然との調和のシンボルである牡鹿(1500歳の玄鹿)を従え、手には長寿のシンボルである不老長寿の桃を持っている。南極老人星カノープス(シリウスに次ぎ全天で二番目に明るい)の化身とされる。同じく七福神福禄寿と同一とされる事もある。こちらは、元々福星・禄星・寿星の三星を神格化したもので、最後の寿老がカノープスにあたる。

さて、最後に句に詠んだ「むべ」に纏わる話を。天智天皇が近江の蒲生野て狩りをしていた際、琵琶湖のほとりで長寿の老夫婦に会う。彼らに長生きの理由を尋ねたところ、この地に古くから伝わる果物を毎秋に食しているからだという。それを口にした天皇が言った「むべなるかな」が、そのままこの果実の名前となった。アケビ科だが、アケビよりは小さな果実で、甘いが食べにくいため商品化はされず、皇室や神社に献上されてきた。しかし近年の研究で、抗がん作用等があることが分かってきている。

むべ食ふてとこしえに舞ふでんでら野風来松