129. 狼男

獣人の一。

満月の夜、狼の半獣姿に変身し、人を襲う。人狼とも。ドイツではワーウルフ(wereは古語で「人間」)、フランスではル・ガルー、ギリシャライカン・スロープ

北欧にはウルーヴヘジンなる人狼の戦士が。また、ベルセルク=バーサーカーも「熊の毛皮を着るもの」の意で、獣を憑依させる戦士。東欧でも古代、若き戦士集団が儀礼的に狼に変身した。収穫を狙う悪魔と戦うベナンダンテなる人狼もいた。

古くはヘロドトスの『歴史』に、年に一度全員が狼となる、スキタイに移住して来たネウロイ人について書かれている。プリニウスの『博物誌』にも、アルカディアに住むアントゥス氏族には、投票で選ばれた男が9年狼と暮らすという儀式があると書かれている。『ギリシャ神話』にも、ゼウスに狼にされるリュカオーン王の話があり、この王の名がライカン・スロープの語源。『旧約聖書』にも、ネブカドネザルが自らが狼ではないかと7年間苦しんだとある。

中世以降、狼男の悪しきイメージはキリスト教の魔女狩りによるところが大きい。当時、教会の教えに従わない者に狼の毛皮を被せ、10年近く彷徨わせる刑が存在した。加えて、狼そのものへの人々の恐れも大きかった。15世紀パリの狼王クルートーは40人以上、1764年フランスに現れたジェヴォーダンの獣は100人以上の犠牲者を出した。このが、聖母マリアのメダルで鋳造した弾丸で退治されたことから、後に「狼男の弱点は銀の弾」というのが通説となる。 また、英語でウルフズベインという、トリカブトも民話等では有効とされている。

医学上では、〈狼化妄想症〉、〈狂犬病〉、〈多毛症〉等との関係が考えられる。

創作では、12世紀マリー・ド・フランスの『ビスクラヴレ』。19世紀イギリス、フレデリック・マリアットの『人狼』。1935年の映画『倫敦の狼男』で、前述の銀の弾や、満月を見ると変身する等のイメージが確立。その後も、『ハウリング』、『狼男アメリカン』、『ティーン・ウルフ』、『ウルフ』、『アンダーワールド』、『おおかみこどもの雨と雪』等など...。狼男は時代を超えて生き続けている。

宵闇は月見うどんで待つでがんす風来松