221. 石鎚山

西日本最高峰1982メートル。日本七霊山の一つで、霊峰石鎚とも呼ばれる。

古名は「イワツチ」。「岩の長老」の意か。石の剣に形が似ているからとも。

『日本霊異記』には「石槌山」。『延喜式神名帳』には「石鉄神社」の名がある。

その昔、この地の男神が恋仲の女神に「石鎚山で修行をする間、私が山から石を投げるので、それが落ちた場所で待て。」と言った。その石は伊曽乃神社に落ち、今も男神の手型の付いた石が残る。また、兎の山にもこの石があり、ここでは夜泣きしたり、ひとりでに村に転がったて来たり、山に戻ったりしたという。

開山は奈良時代。役小角による。瓶ヶ森中腹の龍王山で修行の末石土蔵王権現を感得。その後、石鎚山頂に社は移された。小角は登頂を諦めかけた際、斧を研いで針にしようとしている老人を見たことで思いとどまったという。その場所が成就社で、老人は山の神だった。小角は、石鎚に棲むという日本八大天狗の一、石鎚山法起坊とも言われる。

石鎚毘子古命(イシヅチビコノミコト)は、伊弉諾伊弉冉の産んだ十柱のうち2番目に生まれた神である。

その後、石鎚は山岳信仰・修験道の山として有名になり、近世以降〈石鎚講〉が各地に。現代に至るまで多くの教団が作られている。登山者は山に登ることで神と同格になるとされ、帰村後は、ドウグレマイなる、神を落とす儀式をした。また、登った者の草鞋は有り難がられ、田を踏んでもらったり、患部をなででもらったりした。また、山に咲く〈イシヅチシャクナゲ〉は「お山柴」と呼ばれ、これを家の入口に吊るし、呪物とした。

他にも、石鎚には平家の落人伝説があったり、石田三成の墓があると言われたり...。また、瓶ヶ森では地元の青木恵がUFOを撮影したことから、「雄峰ライン」改めUFOラインと呼ばれる。この付近は、昔から火の玉がよく目撃されている。

筆者の父方の祖父は登山家で、幼少の頃から石鎚には何度も登った。結婚後、広島出身のかみさんの祖父も、〈石鎚講〉だったと知り、縁を感じた。むかしから、石鎚のことは、親しみをこめて、「いしづちさん呼んでいる。」

山装う天狗の腕鎖引く風来松