1952年9月12日19時15分、ウェストバージニア州ブラクストン郡フラッドウッズの町。グランドでサッカーをしていたエドワード・メイ(13)と弟フレッド(12)友人のトミー・へイヤー(10)は、光り輝く物体が頭上を横切り、10km程先のフィッシャー農場の丘に落ちていくのを目撃する。彼らは兄弟の母親である美容師キャスリーン(32)と、州兵ユージン・ジーン・レモン(17)とその愛犬、ニール・ナンシー(14)とロニー・ジェーヴァー(10)の七人と一匹で現場へ向かった。
到着してみると、丘の頂上には3m程の大きさの火の玉が脈動するように輝いており、目や鼻を焼くような刺激臭と霧状のものが立ちこめていた…! その時、レモンが左手の樫の木の下に2つの光があるのに気が付き、懐中電灯で照らしたところ、それは現れた!
大きさは約3.5m。赤い顔に光る目、スペード型フードのような頭部、胴は金属質、緑色でスカートのようなひだ、短い鉤爪のある手。それはシューシューと音を立てつつ、浮遊して接近してきた後、火の玉の方へ移動。一行は慌てて逃げ出した!
街へ戻った彼らは、保安官ロバート・カー、地方紙『ザ・ブラクストン・デモクラット』のA・リー・スチュワートに連絡。それぞれが現地に向かったが、火の玉やモンスターの姿は既に無く、ただ焼け付くような金属の匂いが立ちこめていたという。一時、発見された二本の轍と黒い液体がUFOのものと報じられたが、すぐにそれは見物人の車の跡と判明。ただ奇妙な形の銀色の金属片が見つかったとも言われる。
一方、メイ夫人と少年達は、鼻や喉の傷み、嘔吐等に数週間苦しめられる事となる。
この事件は、数日後には新聞やラジオ、テレビにより全米に知られる事となり、町には一時数千人もの見物人が殺到した。事件の七日後の9月19日には、早くもメイ夫人がニューヨークのテレビショー『ウィー・ザ・ピープル』に出演。この際、番組スタッフは制作した現場の写真を背景に合成したイラストが、筆者も描いた有名な一枚である。
その後、様々な調査・検証が行われた。超常現象調査団体〈サイコップ〉は隕石の見間違いと推測。UFO調査団体〈シビリアン・ソーサー・インベスティゲーション〉によると、事件当時、現地では家全体が揺れるような大きな振動があり、ラジオ放送が45分間中断していた事、少なくとも三件のUFOの目撃があった事、一週間前にもウェストンに住む母子が同様のモンスターに遭遇していた事等が分かった。
しかし、やがてUFOは隕石、モンスターはメンフクロウの見間違いという事で、騒動は沈静化していった…。
事件のまる一年後、グレイ・ベイカーは自ら発行した雑誌『ソーサリアン』で、この件を特集。その後数十年に渡って執筆を続けた。1956年の『彼らは空飛ぶ円盤を知りすぎていた』では、この後各地のUFO出現の現場に現れるメン・イン・ブラックの名を初めて登場させた。また、かのアイヴァン・サンダーソンも調査を行っている。日本ではSF作家南山宏により3mの宇宙人として少年向けの本で紹介して流布された。
実は1950年代というのは、UFOブームが巻き起こった時代であった。1952年、有名なジョージ・アダムスキーがUFO・宇宙人と遭遇。同年、ワシントン上空でのUFO乱舞事件。1957年にはブラジルで、アントニオ・ヴィラス・ボアスが宇宙人による誘拐=アダプテーションに初めて遭っている。また、1950年にはイギリスで〈フライング・ソーサー・ワーキング・パーティー〉、1951年にはアメリカで〈プロジェクトブルーブック〉…と、UFO研究組織が続々と誕生した。
近年の再調査では、フラットウッズモンスターの姿は四角い体に目が付いていただけともされ、ロケットのような機械という説も言われている。実際これと似たような何かがメキシコでも目撃されている。また、最新の研究によると、あの日アメリカ東部10州、116地点でUFOが目撃されており、宇宙人の死体が発見されたという事件も! 同日に発生したそれら全てを隕石というのは、さすがに無理があるのでは…と言われている。
現在、フラットウッズから8km離れたサットンに、フラットウッズモンスターの博物館が建てられており、グッズも作られ、観光地になっている。
実は今回これを取り上げたのは、前回に続きUMAシールをくれたアメリカの友人の勧めだった。彼はウエスト・ヴァージニア出身なのだ。筆者も子供の頃からこのモンスターの事は見知っていたが、どうもかび臭いイメージでさして気にもとめていなかった。だが、調べてみると大変面白くて、なんだが、あの介良事件ともよく似たムードあり…。因みに、友人はフラットウッズには行った事がなかったが、もう一つのこの地の有名UMAであるモスマンの出現地は訪れていて、銅像の前で撮った写真を見せてくれた。それは、想像していたモスラに人の足がついた姿ではなく、ちょっとマーベルヒーローのようだったが…。
因みにウエスト・ヴァージニアは、あのジョン・デンバーの『カントリーロード』に歌われている。句も少しそれを意識してみた。しかし、彼の故郷は実はニューメキシコ州のあのロズウェルなのだった…!!
流星堕つこの道の先あの森が風来松