124. 羅城門

奈良時代、鎌倉朱雀大路の南端にあった京都の正門。桁行七間、梁間二間の二重閣だったとされる。本来、羅城とは街を囲むような城壁の事で、中国では多く見られるが、日本には無い。この門も、両端に幾らか壁があった程度だと思われる。『日本紀略』によると、816年大風で倒壊。再現されるも918年再び暴風雨で壊れたとある。ただ『今昔物語』には、それ以前から荒廃が進み、上層には死体が捨てられていたと言う。これを元に書かれたのが、かの芥川龍之介の『羅生門』である。

やがて、門にはが棲むと噂となり、酒呑童子討伐の後、四天王の一、渡辺綱もここで対峙している。兜を奪われるも、片腕を切り落とし撃退。『謡曲』にも歌われた。更にその後の顛末も『平家物語剣巻』にあり、十日後に老婆に化けたに腕は取り返されたとある。ただ、ここでは羅城門でなく、一条戻橋になっていたり、茨木童子と同一視されていたりと、混乱している...。

これを書いていて、ふと思い出したのだが、幼少期を過ごした松山市柳井町に最近できたおでん屋で、若いマスターに聞いた話。「昔、この商店街にあって、今は取り壊されているアーケードには、幽霊が出るって有名だったらしいすよ。」そんなの初めて聞いたので、ちょっと笑ってしまった。その時に、なんだか『羅生門』みたいだな...と思ったのだった。まあ、確かにずっと蓋をされていたりする場所に、何かが溜まるという事はあるのかもしれない。

木枯らしの吹き抜けて哭くアーケード風来松