226. 四凶

前回に続き中国を取り上げる。中国由来の妖怪は、に始まり、九尾の狐キョンシーろくろ首天狗河童...。井上円了も水木サンも妖怪の「少なくとも70%は中国のもので、20%はインド、残り10%が日本固有のもの」だといっている。そういう訳で、中国の妖怪はとても一回では収まりきらないので、今回は四凶に絞ってみた。

四凶は、聖人・舜帝により、中原の四方に流された、四柱の悪神塞の神として、四方を守護していたが、後に鬼門である西方の羽山へ流刑となった。『書経』『春秋左近伝』等に載る。

渾沌(こんとん)は、全身が長毛に覆われた犬のような姿で、熊のような太い足には爪が無い。虚ろな目は笑っているが見えず、耳もあるが聞こえず。自らの尾を咥え、いつまでも同じところを回っている。また、六脚六翼で、目・耳・鼻・口...の七孔が全て無いとも。『封神演義』には、鴻釣道人として登場したが、恩返しに七孔を開けられたことで死亡した。

饕餮(とうてつ)は、大きな口と羊のような角を持ち、体は羊や牛のようで、脇の下に目がある。また、体が無いとも。目に付くものは、石でも山でも人でも、あらゆるものを貪り尽くす。殷から周の時代、を喰らうとして、青銅器の装飾にも描かれた。明では、五番目の竜生九子とされたり、黄帝と覇権を争った蚩尤の頭部ともされる。

窮奇(きゅうき)は、ハリネズミのような鋭い毛の生えた牛の姿とも、翼のある虎の姿ともされる。争いや諍いを起こし、正しいものは食い殺し、不正の者には獣の肉を与える。災厄を食べるという十二獣の中にも名があり、風神の一ともされる。

檮杌(とうこつ)は長い尾を持ち虎のように力強い体に、猪のような鋭い牙のある人面。無知と頑なさから、争いを好んで暴れまわり、死ぬまで戦い続ける。

四凶は、皇帝の愚息達とも言われ、後に神格化、妖怪化した。また、渾沌は、混沌と怠惰。饕餮は貪欲と貪食。窮奇は不正と背信。檮杌は暴力と無知。と、いうように人の原罪を象徴しており、キリスト教の〈7つの大罪〉に似ている。

ちなみに有名な四方を守護する四神と相まみえた事はない。実は四神は新しく、周代頃の生まれである。

冬ざれの四隅に四凶常に在り風来松