49. 予言

その夜、相変わらず遅くまで仕事に追われ、もう暫くすると深夜0時を迎えようとしていた。いつもの中華居酒屋で飲みながら、会社の同僚は「無銭飲食をして包丁を持った店主に追いかけられたい。」と言った。私は「道路いっぱいに絵を描きたい。」と言った。「もしも、何も起こらなかったらヤバいんで、こっそり屋上にしとけ」と言われた。結局何もせず、何も起こらず0時を迎え、1999年7の月は終わった...。

五島勉の『ノストラダムスの大予言』が出版されたのが1973年。『1999年7の月に人類が滅亡する』(正確には『空から恐怖の大王が降ってくる』)という予言に、筆者は...いや人類は約4半世紀、呪われていたと言ってもいいだろう。いやいや、どうも大騒ぎしていたのは、日本人だけだったらしいが...。出版の翌年、映画化もされ(なぜだか文部省推薦)、本は3ヶ月で100万部を突破! その年のノンフィクション部門売上で第1位! 総合でも2位に。(1位は五木寛之訳『かもめのジョナサン』)その後、空前のオカルトブームとなる...。

元々、ノストラダムスは、ルネサンス期のフランス人で、医師であり占星術者。ミシェル・ド・ノートルダムと言う。ペストを鎮めたり、フランス国王アンリ2世の顧問となり、その後記したのが『諸世紀』だった。後の国王や教皇も言い当て、その予言の中には、パスツール、ヒトラー、クレジット、カーマニア...等の具体的な名詞もあると言う...。ただ、予言は難解な四行詩で書かれており、これを五島勉が創作やら、誇張やらを小説レベルかというくらいにまで盛り込み出版したのが、前述のベストセラー本だった...。

元来、「予言」と「預言」は同義であったと思う。預言者は、神の言葉を預かりそれを伝えた。インドの聖仙アガスティヤ、ギリシャの七賢人の一人エピメニデス、キリスト、モーセ、ムハンマド...。日本の卑弥呼も、安倍晴明も同じような物だったのだろう。現代でも、ネパールの生神〈クマリ〉も預言を行うが、これは例えば彼女があまり食欲がないと見られると、景気が悪くなる...といった具合。

これとは別に超常的な方法で未来を知覚する事を、予言という。

リーディングで人生相談や、病気の治療を行ったエドガー・ケイシー、ケネディ暗殺や冷戦を予言したというジーン・ディクソン。この二人とノストラダムスで、〈世界三大預言者〉と、日本で勝手に呼ばれたりもする。二人は20世紀初めの人物だが、2000年になってからも未来人を名乗るジョン・タイターがネット上に現れ多くを予言した。

日本でも、明治時代の易聖・高島嘉左衛門は抜群の的中率だったという。昭和の千里眼少女・藤田小女姫は、岸信夫・福田赳夫・松下幸之助等、政財界の大物を顧客とし、学生時代の王貞治も占った! 現代では、東日本大震災を言い当てたという少女漫画家・竜樹諒。来年2025年7月も大災害を、予言している。

来年の大災害は、アメリカインディアンのホピ族の予言にもある。(水木サンはホピの極秘の仮面行事〈ニーマン〉にて、その様子をこっそり写生した!)偽書とされる、16世紀フランスの予告アンソロジー『ミラビリス・リベル』、中国宝誌和尚の『邪馬台詩』...。諸葛孔明の書いた『馬全課』は16文字からなる14章からなる予言の書だ。

予感といえば、子供の頃に見たNHKの人形劇『プリンプリン物語』の、カセイジンを思い出す。耳をくるくる回しながら「予感がします!」と言って予言を行っていた。この作品、実はインドの『ラーマヤナ』がモチーフという。『君が代』のパロディがあったりと、かなり攻めた内容だったが、当時皇女だった紀宮が大ファンだった為、1年の放送予定が3年に延びたという?! なんと、この秋、失われた映像を全国に呼びかけて発掘し、全話を再放送するらしい!

1999 7の月何するこの世終わるなら風来松