225. 掃晴娘 サオチンニャン

昔々、中国のある村に連日雨が降り続き、水害に陥った。村に住む少女掃晴娘(サオチンニャン)が、雨が止むよう龍神に祈ったところ、天より「私の妃になるのなら...」との声が。受け入れると、雨は止み、彼女は天に昇っていった...。

北京に切り絵の得意な、聡明で美しい少女がいた。名は晴娘(チンニャン)。ある年の六月北京は水害級の大雨に見舞われた。彼女が止むように天に祈ったところ、天より「東海竜王の妃になるのなら...」と。受け入れると、雨は止み晴娘は天に昇った。それ以来、北京の人々は雨が続くと、切り絵の少女の人形を門の左にかけるようになった。

これらの話は、明代の『帝京景略』に初出。遅くとも唐代より、六月の雨のやまない時期には閨中の少女たちが、掃晴娘の人形を作り門の左にかけたという。箒で雲を掃くので、逆さに吊るす地方もあれば、浙江紹興では、霊力を持たせる為指を傷つけ血を塗った。

日本でも、江戸時代の『榊原談』にこの風習が記されている。また、平安時代に書かれた『蜻蛉日記』にも、晴天を祈る為女神に着物をきせたという記述がある。

この掃晴娘が日本に伝わりてるてる坊主になったとも言われ、逆に現在中国では掃晴娘は廃れ、てるてる坊主の方が広まっているらしい...!

さて、この話と良く似たアニメ映画を最近観た。2019年新海誠監督の『天気の子』だ。東京に降り続く雨を、ヒロイン天野陽菜が人柱となり止める。が、最後には彼女は天より戻り、雨は再び降り続き、東京は水没していく。ある者は「そこは元々海だった」と言い、ある者は「初めから世界なんて狂っている」と言った。

龍天に掃晴娘サオチンニャンの露連れて風来松